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『十四傾城腹之内』(しじゅうけいせい はらのうち)
著者:柴 善光 挿絵:北尾重政
出版:江戸・善光堂(寛政5年[1793年])
医学と風刺が融合した、非常にユニークな黄表紙の一冊。
本作は、中国の有名な鍼灸書『十四経発揮』のパロディとして制作され、臓器たちが擬人化されて登場します。肝臓・胆嚢・胃などが商人として描かれ、帳簿の点検を行うなど、当時の経済観や身体観を風刺的に表現しています。
挿絵を手がけたのは、黄表紙の名手・北尾重政。インパクトあるビジュアルが物語を引き立てています。医学や道教的要素を背景にしながらも、庶民の感覚や笑いを誘う構成は、近世文学の魅力を存分に伝えています。
以下は、栗山久『比較の内臓:時間と空間を超えて身体の内部を探る』(2024年、p.71)からの引用です:
「この大衆小説のタイトルは、中国の著名な鍼灸論書『十四経発揮』をパロディ化したものです。…これらの臓器は商人として擬人化されています。肝臓、胆嚢、胃は帳簿の点検に集まり、一方で黒白の図像は『虫』という霊体で…」
本書は「身体の内側」を可視化しようとした江戸時代の知的想像力とユーモアが詰まった一冊であり、美術史的にも「解剖学的パロディ」の好例として評価されています(参照:ニコール・クーリッジ・ラウスマニエール『日本の芸術における誕生と再生』p.110)。
四つ目綴じ(ふくら綴じ)による全一巻の完本で、伝統的な東アジアの和装本の形式を保っています。表紙はオリジナルではなく後補と見られ、上表紙の裏面には旧蔵者による署名があります。経年による指紋やシミ、インクの跡が見られ、内部にはところどころ虫食い穴もございます。最終ページの上辺には、ステッカーの剥がし跡がわずかに残っていますが、全体として本文はしっかりと残っており、当時の雰囲気を今に伝える貴重な一冊です。全15葉。サイズは約16.8 × 12.9cmです。